ママスタイル

妊活から出産、育児まで個別サポート-ママスタイル

妊娠中にトキソプラズマ症になったら?胎児への影響は?

December 21, 2015
約 8 分
妊娠中にトキソプラズマ症になったら?胎児への影響は?

トキソプラズマ症という原虫感染症をご存知でしょうか。これは、トキソプラズマという目には見えない極小の寄生虫が感染する事が原因の病気です。寄生虫による感染症というと、非常に恐ろしいイメージがありますが、世界的にも多くの人がトキソプラズマに感染しており、その数は世界人口の約3分の1とも言われています。地域によって感染率に差がありますが、日本国内では成人の10%、10人にひとりがトキソプラズマに感染しているという事です。

しかし、トキソプラズマに感染してもその多くの人には、症状が現れず特別治療も必要ありません。そして一度感染してしまうと終生免疫を得る事が出来ます。この様にトキソプラズマ症は恐ろしい感染症では無いのですが、特別に注意を払わなければいけない人達もいます。それは免疫障害を持っている方や妊娠中の女性です。

妊娠中の女性がトキソプラズマに感染してしまうと、胎内感染により先天性トキソプラズマ症の赤ちゃんが産まれてくる可能性があるのです。そこで妊娠中におけるトキソプラズマ症が及ぼす影響について見ていきたいと思います。

トキソプラズマ症とは

先に説明したとおり、トキソプラズマ症はトキソプラズマという原虫による感染症です。潜伏期間は5日から数週間と言われ、健康な成人が完成しても殆どは不顕性感染です。症状が現れても、健康体なら風邪と同じ様な症状、発熱や関節痛程度で終わりますし、一度感染すると終生免疫を得る事が出来ます。

トキソプラズマの感染原因

トキソプラズマは、人間だけではなく他の哺乳類や鳥類といった温血動物に寄生します。しかし、終生宿主となるのはネコ科の動物に限られています。ネコに寄生した時のみ有性増殖をするという特徴があります。

感染経路はトキソプラズマに感染した動物の生肉や猫の糞便、また土壌からの経口感染です。つまり放置したネコの糞便や土壌、トキソプラズマに感染した生肉を食した場合、またそれが触れたまな板や包丁などのキッチン用品から経口感染するという訳です。

妊婦が感染した場合

妊婦がトキソプラズマに感染しても、健康な妊婦自体には症状が現れません。ですから、自分がトキソプラズマに感染した事に気づかない事がほとんどです。

しかし、妊婦がトキソプラズマに感染してしまうと、30%から40%の確率で胎児に胎内感染してしまいます。妊娠初期では胎内感染率は約2%ほどですが、妊娠後期では80%の確率で感染します。

妊婦が妊娠後期にトキソプラズマに感染する程、胎児への感染率は高くなり妊娠初期では感染率は低いのですが、重篤度に関しては真逆になります。つまり症状の程度は妊娠後期に胎内感染した方が重いという事です。

先天性トキソプラズマ症

妊娠中にトキソプラズマに感染した時だけではなく、トキソプラズマに感染して半年以内に妊娠した場合は、お腹の赤ちゃんに胎内感染する可能性があります。

先天性トキソプラズマ症に羅感して産まれてきても、出生当初は症状が見られず分からない事も多いものですが、未熟児であったり黄疸症状が強いというケースが見られます。逆に妊婦検診のエコーで脳室拡大などが発見され、先天性トキソプラズマ症だと分かることもあるのです。また妊娠初期に感染した場合は流産してしまう事もあります。

先天性トキソプラズマ症では、脳室拡大・頭蓋内石灰化・脈絡網膜炎・肺臓炎・心筋炎・精神運動障害などの症状が現れます。これは全ての症状が現れるという訳ではなく、胎児に現れる症状は各々によって異なります。

脳室拡大

脳室拡大は、その名の通り脳室が通常よりも大きくなってしまう事です。先天性トキソプラズマ症では、脳室拡大は水頭症として現れる事が多くなっています。水頭症では頭痛や吐き気、視力障害、首すわりなどが遅く知的障害が出る場合があります。ただ水頭症だからといって必ずしも知的障害が現れる訳ではありませんし、生涯首がすわらないというものでもありません。

頭蓋内石灰化

頭蓋内の石灰化が見られると、知的障害や運動障害が見られる可能性が考えられます。

網脈絡膜炎

目の黄斑部に炎症が発生します。そのため、視力障害が発症したり、斜視の症状が現れる事もあります。

肺臓炎・心筋炎

肺、心臓の筋肉が炎症を起こす事です。肺臓炎では、息切れや呼吸困難などを引き起こし、心筋炎では不整脈や心不全、また突然死の原因となる事もあります。

精神・運動障害

先天性トキソプラズマ症の場合、精神運動発達の遅れが見られる場合があります。これは一部の症状であり、先天性トキソプラズマによって引き起こされる病や障害は他にもあります。しかし、程度や現れる症状には個人差があります。

検査方法

妊娠初期の検査として、血液検査が行われます。この血液検査では、血液型の他に妊婦が感染していると胎児に重篤な症状が現れる可能性のある梅毒感染・HBs・HCV・風疹などの検査も行われます。その中にトキソプラズマの検査を含んでいる病院が多いですが、トキソプラズマの検査は任意のため初期の血液検査に含まれていない場合もあります。

もし、血液検査にトキソプラズマが含まれていない場合、気になるならば任意で検査を受ける必要があります。母子手帳を確認して血液検査にトキソプラズマの項目があるか確認してみましょう。この検査では、トキソプラズマ抗体が分かります。過去に羅感した事がある場合は、妊娠中にトキソプラズマに感染する事はないので安全です。もし、トキソプラズマ抗体がない場合は、十分に注意しましょう。

トキソプラズマが胎児に影響を与えるのは妊娠中及び妊娠の半年前までに『初めて』トキソプラズマに感染した場合のみです。そのため、一度トキソプラズマが陽性と出た場合は、再検査を行う事になります。再検査でも陽性となった場合、胎児に感染しているかどうかを調べる為に羊水検査を行う事があります。

羊水検査で胎児への感染が認められなければ、胎児への感染を予防するためにアセチルスピラマイシンという薬を飲むことで胎内感染の確率を下げる薬を飲みます。早期にアセチルスピラマイシンを飲むほど感染を防ぐ確率が上がるため、トキソプラズマ症では早期の発見と対応がとても重要となるのです。もし、羊水検査で残念ながら胎内感染が認められた場合は、アセチルスピラマイシンでは治療は出来ませんが、胎児に現れる症状の軽減は可能だという事が判明しています。

羊水検査について

羊水検査は、出生前診断のひとつであり子宮に針を刺して吸引した羊水を使用して胎児の異常の有無を調べる検査です。羊水検査の精度は高いのですが、0.2%~0.3%は流産する可能性があると言われています。そのためトキソプラズマが陽性であっても、必ずしも羊水検査を行う訳ではありません。

また逆に医師からの提案がなくても、任意で羊水検査をお願いする事も可能です。

先天性トキソプラズマ症を防ぐ為には

先天性トキソプラズマ症は胎内感染であるため、予防としては母親のトキソプラズマ感染を防ぐ事が第一です。

妊娠中に猫を飼い始めない

妊娠中に新しく猫を飼い始める事は避けましょう。猫の糞便にトキソプラズマが排出されるのは、初めて猫がトキソプラズマに感染した時のみです。ですから、今飼っている猫を手放す必要はありませんが、新しい猫を迎え入れる事は避けましょう。また、トキソプラズマにまだ感染していない可能性がある猫を外へ出すのも妊娠中は控えた方が賢明です。

猫の糞便はすぐに始末をする

猫の糞便から排出されたトキソプラズマが感染力を持つには、放置されてから1日~5日程度かかります。排出されてからすぐに感染力を持つわけではないので、すぐに後片付けをしましょう。妊娠中は、なるべく糞便の処理は家族に頼み使い捨てのゴミ手袋を着用して貰えばより安全です。

ガーデニングを控える

土壌からの感染も考えられなくはないので、なるべくガーデニングなどの土いじりは避けましょう。どうしても行う場合は、マスクとゴム手袋を着用して行ってください。

生肉は食べない

トキソプラズマは生肉を摂取する事によって経口感染する事もあります。しかし、トキソプラズマは熱に非常に弱いので66度から70度に加熱してお肉を食べるようにしましょう。生肉に必ずトキソプラズマが潜んでいる訳ではありませんが、妊娠中は生肉を避けてきちんと中まで加熱した方が安全です。

トキソプラズマまとめ

トキソプラズマは健康体の人が感染した場合は、何も恐ろしい感染病ではありません。しかし、胎児へ胎内感染する可能性があるため妊娠する6カ月前から妊娠中の女性はトキソプラズマに初感染しないように気をつけなければいけません。

感染しても母親には症状が現れないケースが殆どですが、胎内感染すると赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症を患って産まれてくる事になります。母親がトキソプラズマに初感染しても、薬によって胎内感染のリスクを減らしたり、もし胎内感染が確定しても薬を飲む事で赤ちゃんに現れる症状を軽減する事は可能です。

妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した妊婦の中には、妊娠前から生肉を食べていたり猫を飼っていた経験がある方もいます。その為、何故妊娠中に初感染してしまったのか?と不思議に思う方もいるでしょう。

しかし、妊娠中は免疫の変化により今までと何も生活や行動が変わらなくても、トキソプラズマに初感染してしまう事もあるのです。抗体を持っているなら別ですが、トキソプラズマ抗体検査で過去に掛かった事がないと分かったら、新しく猫を飼わない、外に出さない、糞便の世話をしない、生肉を食べない、土いじりをしない方が良いでしょう。そのため、トキソプラズマの検査は任意ですが、出来れば妊娠中に検査を受けておく事をお勧めします。万が一トキソプラズマに初感染したとしても、早期に発見する事で胎児への感染を予防したり、症状を軽減する事は可能なのです。

母親がトキソプラズマに感染しないように心掛けると共に、感染した場合で早期発見早期対応が先天性トキソプラズマ症には有効なのです。